第33章

古江直樹の居場所を知った林澤明美は、すぐにA市へ向かう新幹線のチケットを購入した。

新幹線で一時間ほどの道のりだった。

林澤明美が出発した後、田中さんは事態の重大さを感じ、古江本家にも電話をかけ、古江直樹の状況を伝えた。

A市。

病院。

江崎玲子は手術室のランプを見つめながら、落ち着かない様子で行ったり来たりしていた。

突然、ランプが消えた。

江崎玲子の胸が締め付けられる思いがした。手術室のドアが開き、医師が出てきた。

「先生、どうですか?」江崎玲子はすぐに前に出て尋ねた。

医師は残念そうに言った。「私たちは最善を尽くしましたが...」

その言葉を聞いた江崎玲子は、世界が...

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