第37章

世間では女心が読めないと言われるが、江崎玲子は男心こそ捉えどころがないと感じていた。

弁当箱に残った野菜を見つめながら、彼女は言った。「古江社長、食べないなら私がいただいてもいいですか?」

無駄にはできない。

古江直樹が返事をする前に、江崎玲子はすでに残りを全部平らげていた。

「江崎秘書は食欲旺盛ですね」古江直樹は皮肉を込めて言った。その言葉には別の意味が隠されていた。

風間健一と微妙な関係でありながら、ただの友達だと言い、彼が事故に遭えば泣き崩れる。この女は一体どちらが本当の姿なのか?

あの時、彼女があれほど本気で泣いていたから、てっきり...

江崎玲子は含みを理解せず、思わ...

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