第51章

月島昇は江崎玲子の手を引いて店内に入った。ここは紳士服を主に扱っており、最も高価な服でも1万円を超えることはなかった。

店内のあちこちにはセールの表示が掛けられ、「1990円均一」「990円均一」などの札が目についた。

江崎玲子は気まずさを感じ、声を潜めて尋ねた。「別の店にしませんか?」

月島昇からもらった贈り物は数十万円はするのに、こんな安い服を送るのは心苦しかった。

「ここでいい」月島昇はさっとピンク色のスポーツウェアを手に取った。「江崎、これはどうだろう?」

一般的に男性はピンク色を選ばないものだ。

江崎玲子が色が派手すぎるのではと言おうとしたが、月島昇が先に口を開いた。「...

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