第53章

江崎玲子は古江直樹の言葉の意図が少し理解できなかった。朝早くから服の買い物のことを聞くなんて、どうしたのだろう?

江崎玲子は話題を変え、社交辞令で尋ねた。「古江社長、お怪我の具合はいかがですか?」

「回復は順調で……」古江直樹はその言葉が適切でないと感じ、言い直した。「腕の回復がはかどっていない」

「では水に濡らさないように、腕に力を入れないでくださいね」江崎玲子は言った。「古江社長、特にご用件がなければ、秘書課に戻りますが……」

「この契約書を確認してくれ」古江直樹は一通の契約書を江崎玲子に渡した。「問題がないかチェックして、それからここにKプロジェクトの企画書が山積みになっている...

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