第55章

「赤ちゃん」「妊娠初期」……

その言葉があまりにも目立ちすぎていた。会議室は静まり返り、全員が江崎玲子に異様な視線を向けていた。

その視線には、詮索、興味本位、好奇心、そして軽蔑さえ混じっていた。

江崎玲子は未婚のまま妊娠し、仕事のミスでそのようなチャット画面をスクリーンに映してしまった。当然、皆は「赤ちゃん」の父親が誰なのか気になるはずだ。

壇上の古江直樹の表情は恐ろしいほど冷たかった。江崎玲子は顔を上げる勇気もなく、黙ってプロジェクターを切り、緊張で顔を真っ赤にしていた。

「散会」

古江直樹の冷たい声がマイクを通して会議室全体に響き渡った。「江崎、私の執務室まで来てくれ」

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