第56章

「違う」の一言で、古江直樹は爆発寸前だった。

江崎玲子には風間健一以外にも男がいるというのか?

古江直樹は思わず、皮肉を込めて口を開いた。「江崎の生き方は、本当に開放的ですね。時代の先端を行くというか。未婚で妊娠するなんて。もしかして、子供の父親が誰なのかも分からないんじゃないですか」

この最後の一言で、江崎玲子の怒りに火がついた。

古江直樹のこの言葉は、彼女の私生活が乱れていると暗に示唆しているのではないか?

彼女は二十五年生きてきて、男性は古江直樹ただ一人だけだった。

一方の古江直樹はどうだ?

蘭園に一人囲っておいて、外で誰と寝たかも覚えていない。

「古江社長、それは私の...

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