第8章

蘭園に引っ越した初日、林澤明美は心の中でとても興奮していた。早々にお風呂を済ませ、新しいパジャマに着替えて、古江直樹の帰りを待っていた。

彼女はとても長い時間待ち続け、もう眠りそうになったころ、ようやく物音が聞こえてきた。

林澤明美が寝室に入ろうとしたとき、聞き覚えのある声が聞こえてきた。「田中さん、それでは古江社長のことはお任せします。私たちはこれで失礼します」

それは江崎玲子の声だった。

林澤明美は江崎玲子と二十年以上一緒に暮らしてきた。江崎玲子の声は、彼女にとってあまりにも馴染み深いものだった。

なぜ江崎玲子が古江直樹の部屋にいるのだろう?

林澤明美はすぐに思い出した。江崎...

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