章 61

社長室にて

秦越は携帯で『時空を超える恋』という小説を読んでいた。学内ネットで連載されているタイムスリップ系の小説で、その物語に思わず引き込まれていた。

程雪瑶が軽く咳払いをして尋ねた。「秦越、袁副社長のことをどう思う?」

秦越は顔も上げずに、即座に答えた。「老獪な狐だよ。腹の中は悪知恵でいっぱいさ」

程雪瑶はプッと笑い、「意外と人を見る目があるのね。言い得て妙だわ!」

彼女はデスクの書類を別のものに取り替え、再び黙々と目を通し始めた。

最近、財務部から届いた収支報告書のデータに異常があり、彼女は慎重に確認していた。

もしこれらのデータが本当に異常なら、大問題だ。誰かが会社の...

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