章 53

「はい」

そう言うなり、彼女は部屋の方向へ飛ぶように立ち上がって走り出した。その時、趙天明に一瞥を投げかけることも忘れなかった。あの妖艶な眼差しに、趙天明はまたもや魂を奪われそうになった。

趙天明がようやく幸せの扉を開けたからなのか、それとも李菲菲があまりにも魅力的だからなのか、彼女のちょっとした仕草や眼差しだけで、趙天明は簡単に魂を抜かれてしまう。彼女が趙天明の腕から離れても、空気に残る香りをまだ嗅ぐことができるような気がした。

李菲菲はいつも同じ種類の濃厚な香水をつけていて、彼女のそばを通るたびに、あの香りが漂ってくる。

まるで開けられた古酒のように、誰かに味わってもらうのを待って...

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