章 62

彼らの家はそういう高層ビルではなく、一軒一軒独立した家だった。趙天明は階段から降りるのではなく、バルコニーから老王の家の二階へと身を乗り出した。以前から趙天明はいつもここから行き来していた。彼らの家の正面玄関を通るのが面倒だったからだ。

趙天明が向こう側に着いて、まだ中に入らないうちに、突然部屋から女性の甘ったるい声が聞こえてきた。「鍵はかかってないわよ」

その声は黄莉莉のものではないようだった。趙天明は急いで窗の外に滑り寄り、中を覗き込んだ。

完全には閉められていないカーテン越しに、趙天明は部屋のソファに座る女性を目にした。二十三、四歳くらいの年齢だろうか。

彼女は白い透け感のあるシ...

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