章 267

「王爷じゃありません……梧桐城の貴族たちはよく姿を見せるものですが、この方はあまりお見かけしたことがなくて、となると一つの可能性しか……」

「まさか……長宁の世子様では?」

「そうだ……」

墨颜は不思議に思った。母の爵位は聞いたことがあるのに、目の前の少年は見たことがない。彼女は一歩前に進み、少年と将官の会話を遮った。

「あなた、誰?」

少年は幼い少女を見つめた。泥だらけの顔でも、少女の瞳がとても美しいことが分かる。これが人攫いが彼女を誘拐しようとした理由の一つなのだろう。こんな上品な少女は、どこの闇市場でも引く手あまたの商品になる。天子が厳しく取り締まりを命じていても、珍しい品として高値がつ...

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