章 75

北方では、妖獣は安定しているものの、人間は妖獣よりもはるかに恐ろしい存在である。大斉はすでに動き始め、さらに遠い姑夜は動きを見せていないが、深い水は静かに流れるように、国境防衛はこの数十年来の相手に対して、決して油断することはなかった。

このような情勢の中、社稷の安定を維持できる唯一の方法が、墨無痕の命を賭けることだった。

崇光皇子は躊躇わなかった。「私は霍大夫を信じる。霍大夫に自信があるなら、そうしよう」

「殿下?」唐浅は信じられない思いだった。以前の墨無痕は自分の身の安全を気にかけず、あのように意気消沈していたことを知っていた。しかし、彼女が墨無痕の側に寄り添うようになってからの日々...

ログインして続きを読む