章 1049

「電話を切ると、少し寒さを感じた。タバコを取り出して浩子に一本差し出すと、彼はそれを口に咥え、火をつけた。何も言わず、武さんをじっと見つめている。武さんの呼吸は明らかに荒くなり、視線が落ち着かないまま私を見ていた」

「さっきの電話で、彼は間違いなく疑いを抱いたんだ。誰と話していて、これからどうするつもりなのか、見当がつかない。だから、あんなに動揺しているんだろう」

「おまけに、さっき浩子が彼に言った言葉も効いている。三度に一度は家族の話を出していたからな。今頃、彼もある程度察してきているはずだ」

「これまで彼が話したがらなかったのは、背後にいる人物の性格をよく知っているからだ。その人物の...

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