章 1116

「その瞬間、私はまるで目の前に刀の山も火の海も、龍の棲む淵も虎の潜む穴も、何もかもどうでもよくなったような気がした。どんな状況でも、彼は必ず私の前に立ちはだかってくれると分かっていたから」

「なぜだか分からないけど、ピエロが私の傍に現れて以来、心の中で、あんなに女の子たちがヒーロー願望を持つ理由が突然理解できたの。私にとって、ピエロは白馬の王子様で、孫悟空なの。ふふ、普通は子供っぽさから大人になるものだけど、私は大人びていたのに子供っぽくなってしまった。それまで、ピエロの仮面の下にはどんな顔があるのかって、何度も何度も想像してた。たくさんの顔が、何度も頭の中に浮かんできたわ」

「でもそのた...

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