章 584

先ほどの衝撃的な光景は、今でもまだ頭から離れない。

「行こうか」

江峰の口元の笑みは、再び穏やかなものに戻った。

助手席に座り、静かにタバコを吸いながら、今でもまるで夢でも見ているような感覚だった。

旭兄の件が、こんなあっさり解決するなんて。俺の予想では、江峰が出てきてくれたとしても、長い交渉になるはずだった。自分が少し損をしても、相手に何か利益を与えて、その隙間で生き延びるつもりでいたのに。

俺が黙り込んでいると、江峰も特に話しかけてこなかった。酒場の前まで送ってくれた彼は、こう言い残しただけだった。「お前と小麗の件、早く片付けろよ。俺に残された時間はそう多くないんだ」

複雑な心...

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