章 716

「別荘の玄関に着いたとき、中は真っ暗で、少しも明かりがなかった。左右を見回したが、人影もなかった。でも、ある細部に気づいた。ここにはよく来ていたから、この場所にはかなり詳しいんだ」

「玄関のカメラの角度がおかしい。このカメラは固定されていて、動くはずがないのに、今は数度ずれている。明らかに誰かが触ったんだ。息を殺して、そっと玄関のマットを踏み、それから玄関脇の蘭の鉢の前にしゃがみ込んだ。その下には別荘の予備の鍵が隠してあった」

「ドアを開けた瞬間、思わず息を止めた。リビングは暗かったが、外の街灯の光が窓から差し込んでいたので、中の様子はなんとか見えた。床には割れたグラスが一つ、まるで揉み合...

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