章 911

気が付くと、額には冷や汗が浮かんでいた。手で拭うと、手の甲が汗でびっしょりだった。

「七、八分経って、視界に迫る渓竜山を見ながら、私は躊躇いがちに尋ねた。「運転手さん、道は合ってますか?」」

「運転手はさらりと微笑んだ。「何もかも保証はできないが、この辺りだけは詳しいよ。俺の家もこの近所でね。さっきは抜け道を通ってきたんだ、それもこのスピードでね。この先は通れないから、あの小道を百メートルほど進むと、渓竜山の入口だ。そこも道が途切れてる。その先は以前の大雨で地滑りがあって、道が荒れたままなんだ。山奥だし、ずっと誰も手入れしてないんだよ」」

「私は車のドアを開け、お礼を言うと、数歩走っては...

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