章 19

「彼が深謀遠慮で笑顔の裏に牙を隠すからといって、疑うわけにもいかないだろう」

彼は大物の側にいる二人の古参が自分を好まないことを知っていた。

だがそれがどうした。彼は彼らに気に入られる必要などない。

その二人の古参は義理人情に厚く、やり手でもある。だが時代が変わった今、そんなものは役に立たない。

数億円相当の品が事故に遭って以来、大物は内部の裏切り者を疑い始めた。

大物は言った。香港の公海上で京佑と共に事故を装うと。

その時、周同が出て事故の知らせを流し、内通者を炙り出す手はずだった。

ところが大物は空港へ向かう途中で忽然と姿を消した。

周同は首を傾げた。位置情報によれば大物はある島にい...

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