ハロー、奥様

灼熱の夏。太陽は容赦なく頭上に照りつけ、午後一時頃は一日で最も暑い時間帯だった。許顔歓は買い物袋を手に、額の汗を拭いながら歩いていた。澄んだ瞳は少し細められ、前髪は汗で頬に貼りついている。おそらく暑さのせいか、愛らしい顔は少し紅潮し、一層可愛らしく見えた。

清楚で爽やかな容姿、すらりとした背の高さは、キャンパスを歩く異性の視線を思わず引きつけていた。

大学の授業はそれほど厳しくなく、二年生になると夜間自習もなくなる。この学校の生徒たちは裕福な家庭か名家の出身で、あるいは優秀な成績で入学してきた者ばかり。経済力のある家庭の子供は先生も怒らせられず、成績優秀な学生はおとなしいので、先生たちもあまり管理せずに安心していた。

許顔歓は今年大学二年生。午後は授業がなかったのでスーパーに立ち寄り、日用品を少し買ってきたところだ。彼女は買い物好きではなく、そうでなければこんな暑い日に日焼けを覚悟で外出したりしない。

「わっ、美人だな！」遠くの木陰に立つ二人の男性、その一人が木に寄りかかり、無関心そうに視線を落としていた。何を考えているのかわからない。

そしてもう一人は既に興奮して彼の腕を叩き、あちらを見るよう促していた。

顧瑾塵はその騒がしさに少しイライラし、黒い瞳を上げて彼が指す方向を見た。一瞥しただけですぐに視線を戻した。

「どうだ？美人だろ、綺麗だろ？」顧雲帆は得意げに眉を上げ、何か新大陸でも発見したかのような「褒めてくれ」という表情を浮かべていた。

だがすぐに話題を変え、真面目な顔で顎に手を当て、疑問そうに兄に尋ねた。「俺たちの学校にこんな美人いたっけ？普段は目立たないのか、それとも転校生？」

顧雲帆は彼女を食い入るように見つめ、穴でも開けようとしているかのようだった。

「知らないよ」彼は卒業して一、二年経っている。彼女が転校してきたかどうか、知るはずもない。

これ以上時間を無駄にする気はなく、顧瑾塵は馬鹿みたいな弟を一瞥して、歩き出した。

もう少し早く彼に講演に来ることを告げなければよかった。そばにいると騒がしすぎる。さっきの女の子に何がそんなに良いのか分からない。普通の女の子よりちょっと見栄えがいいだけじゃないか。こんなに興奮することか？本当に自分の実の弟だとは認めたくない。彼が熱くなると、時々自分でも恐ろしくなる。

「あっ！兄貴、待ってよ」顧雲帆は彼が立ち去るのを見て、一人残っても意味がないと思い、名残惜しそうに視線を戻し、小走りで彼の後を追った。どうせ同じ学校だし、また会えるだろう。

許顔歓は先ほど誰かに見られていたことに気づいていなかった。今は暑さで死にそうだと感じるばかりで、早く寮に戻ってエアコンの下に入りたかった。自分の部屋に戻ると、荷物を全部ベッドに投げ出し、疲れてそのまま横になった。もう自分の姿形も気にならない。今はもう動きたくなかった。

「小顔子、買い物に行ってたの？どうして誘ってくれなかったの」同じ部屋の安然が洗面所から出てきて、ベッドで力尽きた許顔歓を見た。

「あなたはあの何とか塵の講演会の情報を集めに行ってたじゃない！邪魔するわけにはいかなかったわ」

この子はイケメン好きで、間違いなく花痴そのもの。少しでもハンサムな男性を見ると、半日も興奮して、飛びつきたいほどだ。そんな花痴な性格で、彼女を誘えるわけがない。

でも彼女が情報を集めていた「何とか塵」という人は、かなり有名らしい。この数日間、多くの人が彼について話していた。イケメンで優秀で、この大学の卒業生だという。家がとても裕福で会社を継げるのに、あえて医者になったらしい。元々彼に興味はなかったが、みんなが話すので少し覚えていた。

「そうなの！そうなの！あなた知らないでしょ、彼は本当にかっこいいのよ」自分の推しの話になると、安然は興奮して目をキラキラさせた。この時、安然は無言で天を仰いだ。また始まった。

嫌がりながらも尋ねた。「会ったことあるの？」

どれだけ興奮していても、許顔歓はいつも冷静に彼女を見ていた。

「ないわよ！」安然は目をパチパチさせ、真剣な顔をした。

「……」姉さん、会ったこともないのにそんなに興奮して、本人に会ったらどうなるの。

「会ったことはないけど、人から聞いたわ。彼は本当にかっこいいって」安然は興奮して手振りで説明したが、許顔歓には何を表現しているのか理解できなかった。

「噂？実は醜いとか？」

「そんなことないわ。今日の午後に彼の講演会が始まるから、そのとき行けば分かるわ。でも一緒に来てくれるでしょ？」安然は彼女の腕を引いて甘えた。

許顔歓が最も苦手なのは彼女の甘え方だった。自分より年上なのに、彼女より甘え上手。こんなルームメイトをどうすればいいの？仕方なく従うしかなかった。

「わかったわかった！行くからいいでしょ！」許顔歓は体を起こし、頭を抱えて眉間をさすった。

安然は自分の甘え作戦が功を奏したのを知り、ベッドの上で喜んで転がり回った。知らない人が見たら精神病かと思うだろう。

許顔歓は彼女の時折狂ったような様子にもう慣れていて、少しも驚かず、淡々と起き上がり、さっき放り投げた荷物を持ち上げて、一つ一つ整理し始めた。

今後は物が少なくなったらすぐにネットで買うと誓った。もう真夏にスーパーに買い物に行きたくない。スーパーの中はエアコンが効いていて涼しいけど、外に出た瞬間は地獄のようだった。

何かを思い出したように、整理の手を止め、安然の方を振り向いた。「午後の講演会は何時から？」

「今日の午後3時頃から始まって、4時頃に終わるわ」これを聞いた安然はすぐに元気になった。

「それなら大丈夫」許顔歓はうなずいた。時間がかかると思っていたが、この講演会に興味がなかったので、聞いているうちに眠くなるのではと心配していた。今なら時間もそれほどかからず、なんとか我慢して聞けそうだ。

許顔歓は自分の物を片付け、化粧品やスキンケア用品を寮の独立した洗面所に置いた。

安然は携帯を見て、既に1時半になっていることに気づいた。これはいけない！小顔子を連れて早めに行って良い席を確保しなければ。

そう思いながら口にも出してせかした。「小顔子、まだ？なんでそんなに遅いの？」

許顔歓は小さな頭を洗面所から出し、彼女を睨んだ。「私を小顔子って呼ぶのやめられない？太監みたいな響きなんだけど」

彼女が聞いているかどうかも確認せず、頭を引っ込めた。

「あなたが私より年下だからでしょ」安然はとても当然のように答えた。

もう呼び慣れていたので、改めるよう言われても違和感があった。それに小顔子は可愛い呼び方だと思っていた。なぜ彼女がそう思うのか不思議だった。

まあいい、自分の推しを見に付き合ってくれるのだから、今後はなるべく控えよう。

中にいる許顔歓は人を殴りたいほど腹が立った。こんなに理不尽な人は見たことがない。でも彼女と争うつもりはなかった。

許顔歓は急いで自分の物を片付け、出ようとした瞬間、まだ気持ちが落ち着かないうちに安然に引っ張られていた。

「ちょっと！何するの、ゆっくり歩けない？また発作？」許顔歓は頭が反応する前に既に彼女に引っ張られていて、呆然としていた。

「もちろん講演会に行くのよ。今行けばいい席が取れるわ。遅れたら席がなくなるから」安然は彼女をバカにしたような目で見た。

「待って、スマホを持ってないわ」許顔歓は自分の携帯を取りに戻ろうとしたが、また引き戻された。

「はい、どうぞ」安然は手の中の携帯を彼女に渡した。

許顔歓：「……」

彼女には理解できなかった。今行ってもまだまだ時間があるのに、行って待つだけ？本当は日焼け止めを塗りたかったのに、こうして引っ張られて、塗る暇もなかった。

ああ、なんて運命なんだろう！