第274章 私の宝は委屈

梨沙と杏が会う前に、望と朔は大体の察しがついていた。間違いなく杏に利益をちらつかせて自分のために動くよう誘い、様々な好条件を約束して懐柔しようとしているのだろう、と。

事実はその通りだった。梨沙はまず杏を気遣うふりをして、彼女の勉強のことや、兄の状況などを尋ねるなど、ことさら優しく親しげに接してきた。

杏は演技が得意な上、梨沙に与えた印象も悪くなかったため、梨沙の彼女に対する警戒心は低かった。

前回の杏の立ち回りが功を奏したのだ。最終的な結果は梨沙の望むものではなかったが、杏の行動自体には何の問題もなかった。

信用を得るため、杏はまず泣きながら貧乏暮らしを訴えた。海外留学したいが資金が...

ログインして続きを読む