第334章 奇妙な家庭の雰囲気

「俺も詳しくは知らないんだ」

 彰は嘘をついていなかった。義母のことは本当に何も知らないのだ。

 穂乃香の母は、彼女が中学生の頃に他界している。彰と穂乃香が出会ったのは高校時代だ。

 その間、穂乃香が母親の話をすることは滅多になかった。彼女は一点の曇りもない明るい性格だったため、彰が母親の死を知ったのは、結婚する少し前のことだった。

 実家には彼女一人しか残っていなかった。

 二人は穂乃香の生い立ちについて話し合うことはなかった。ただ一度だけ、映画を見終わった後、劇中の家族との死別の話題になった時、彼女が言った言葉が今でも彰の心に深く刻まれている。

「お母さんが言ってたの。自分が死...

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