第34章 ママはお金持ち!

その頃、江田和樹の頭の中は八番が誰なのかということでいっぱいだった。自分に恨みを持つ人間を一人一人除外し、相手の正体を探ろうとしていた。

突然、壇上のオークショニアがハンマーを叩く音が聞こえた。「おめでとうございます、八十六番のお客様! 三千万円でこの『黎明の序曲』を落札されました……」

江田和樹ははっと振り返った。藤堂蓮の手にある番号札は確か、八何とか六何とか……だったはずだ。

藤堂蓮が持つ八十六番の札を見て、江田和樹は信じられないといった様子で目を剝いた。あり得ない、あいつはただの貧乏学生だ、三千万円もの大金で絵画一枚を買えるわけがない!

藤堂蓮の後ろに立つ二人の後輩くんも唖然とし...

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