第5章

愛未の視点

朝の光が窓から差し込む。目を開けると、ベッドの隣は空っぽだった。でも、シーツにはまだ温もりが残っている。

椅子にかけてあった彼の白いワイシャツを手に取る。私には大きすぎて、丈は太ももの真ん中あたりまであるし、袖は二回捲らないと指先が見えない。もう二週間、ほとんど毎朝ここで目覚めている。このシャツを着るたび、安心する。

素足でキッチンへ向かう。玉子焼き。直樹が灰色のTシャツと寝巻きのズボン姿でコンロの前に立ち、完璧なタイミングで卵を少しずつ巻いていた。

「また玉子焼き作ってるの?甘やかされちゃうよ」

彼が振り返る。その視線が、彼のシャツを着た私の上を滑る。口の端が...

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