第6章

愛未の視点

まだ寝室に朝の光は差し込んでいない。直樹を起こさないように、そっと布団から抜け出す。

クローゼットにかかっている、レンタルしたドレスを見つめる。同僚がデザイナーものだと断言していた一着だ。ハンガーからドレスを外す指が震えている。

バスルームで、フルメイクを施す。ファンデーション、コンシーラー、アイシャドウ。普段はまったくやらないようなことばかり。アイライナーを引く手が震える。鏡に向かって笑顔の練習をする。一度、二度。なんだかおかしい。偽物のようだ。

手のひらの汗が止まらない。

ごめんね、直樹。でも、これはお父さんのためなの。お父さんの契約がうまくいくように手伝...

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