第8章

愛未の視点

深呼吸する。オフィスは静まり返っていて、自分の心臓の音まで聞こえるほどだ。直樹が目の前に立って、待っている。

「すぐに許せるかは、わからない。でも、どうしてあんなことをしたのかは、理解できる」

声が、まだ少し震えている。

「求めているのはそれだけだ。チャンスをくれ」

彼の声は慎重だ。何十億円もの決断を瞬きもせずに下すこの男が、まるでそれが世界で唯一重要なことであるかのように、私の答えを待っている。

彼はデスクまで歩いていくと、書類を一枚手に取り、私に手渡した。

「早川テックは君を、ウチの品質保証本部長として雇いたい。年俸は八千万円だ」

それを受け取ると、...

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