第5章
午前六時。俺はソファにだらしなく体を投げ出し、今夜三杯目のウイスキーを握りしめていた。
コーヒーテーブルの上では、白桜音楽賞のトロフィーが、薄暗い部屋の光を鈍く反射し、まるで俺の愚かさを嘲笑うかのように、冷たく輝いていた。わずか二十四時間前、俺はこれを人生の最高峰、到達した頂点だと信じて疑わなかった。しかし今、その輝きは、俺の胸を抉る、あまりにも残酷な記念品にしか見えなかった。
ネット上の誹謗中傷は時間とともに酷くなる一方だった。「#玲子の誕生日プレゼント」というハッシュタグの下、すべてのコメントが胸をえぐるナイフのように感じられた。
「山崎隆司はクズ野郎だ!」「死んだ元カノまで...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
縮小
拡大
