第9章

玲子視点

私が死んでから、一年と三ヶ月と四日が経った。

でも、今朝も私は、隆司の三十歳の誕生日を「見守って」いる。

どうしてこんなことができるのかなんて、訊かないでほしい。たぶん、未練があるから。たぶん、あのビデオが本当に彼の助けになったのか、知りたかったから。一年前の今日、彼は二十九歳の誕生日を怒りと衝撃の中で過ごした。今日、彼がどうなったのか、この目で見届けたい。

午前五時五十八分。リハビリセンターの個室で、隆司は時間ぴったりに目を覚ます。目覚まし時計も、リマインダーもいらない。彼の体内時計は、毎年二月五日になると、この儀式を自動的に始めることを学習してしまったのだ。

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