第10章 浮気相手に仕立て上げられる

古谷晏一は、自分の譲歩が瀬尾杏奈にとってこの上ない情けだと、本気で思い込んでいた。

こんなふうに言ってやれば、瀬尾杏奈は喜びに震えて頷く――そんな甘い幻想まで抱いていたのだ。

けれど今の瀬尾杏奈には、ようやくわかっていた。かつての自分が、どれほど惨めに、どれほど愚かしく彼を愛していたのか。

幸いにも、彼女の心はもうとっくに死にきっている。古谷晏一の二言三言で、再び自分を奈落へ突き落とすはずがなかった。

瀬尾杏奈は唇の端を冷たく吊り上げた。

「古谷晏一、もし頭の具合が悪いなら、一度病院で診てもらったほうがいいわ。このチャリティーディナーには、陸川社長にお伴して来ているの」

そう言う...

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