第101章 悪には悪を

瀬尾杏奈が意識を取り戻したとき、鼻先を刺すような消毒液の匂いがした。ゆっくり瞼を開けると、そこは病院の個室。視界の端に、ぼんやりと人影がいくつも揺れている。

「……目、覚ました!」

いちばんに響いたのは瀬尾晴海の声だった。娘の顔を見た瞬間、堪えていたものが決壊したように泣き出す。瀬尾正樹もまた、心配を隠せない表情で身を乗り出した。

杏奈は窓辺に人が集まっているのを見て、両手でベッドを押し、起き上がろうとした。けれど身体に力が入らない。ふらりと前に倒れ、ベッドから落ちかけた、その瞬間――。

陸川純平が素早く腕を掴み、もう片方の手で後頭部を支えた。乱暴さは一切なく、壊れ物を扱うみたいに彼...

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