第14章 額いっぱいの鮮血

水野心音は怯えたようにびくっと肩をすくめ、わざとらしく腕を引いて身を退いた。顔には途方に暮れたような、泣き出しそうな表情。

「晏一……杏奈さん、どうしたの?」

瀬尾杏奈がいちばん憎いのは、その「か弱くて守ってあげなきゃ」みたいな顔だった。けれど古谷晏一がいちばん弱いのも、まさにそれだ。

案の定、古谷晏一は水野心音の前に立ちふさがり、眼底の荒い光を滲ませる。

「杏奈、何する気だ。心音はこんなに傷ついてるのに、まだ手を出すつもりか? ただのブレスレットだろ。そんなもん、俺が十本でも百本でも買ってやる。そこまで心音に当たる必要があるのかよ」

水野心音は、あのブレスレットが瀬尾杏奈にとって...

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