第22章 出て行ってください

瀬尾杏奈が顔を上げると、そこには丸々とした顔の男が立っていた。彼女を見た途端、その目にあからさまな驚きが走る。

「君、新しく入った秘書?」

太った男は目を輝かせながらそう言った。

石村海斗。社内では古株の部類に入る社員で、いわゆる縁故組でもある。

その石村のひと言で、フロア中の視線が一斉に瀬尾杏奈へ集まった。

瀬尾杏奈は床に落ちた書類を拾い上げ、落ち着いた所作でデスクの上に置く。

何も答えない彼女を見て、石村海斗はますます確信したようだった。新しく配属された秘書――そう思い込んだのだ。

そして周囲の面々も、まるで当然のように同じ結論へ飛びついていく。

若く、美しく、隙のない空...

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