第29章 すでに見抜いている

彼女ははっとして振り向いた。見慣れた人影が、こちらへまっすぐ歩いてくる。

水野心音だった。充血した目で瀬尾杏奈を睨みつけるその様は、今にも噛み殺さんばかりの剣幕だ。

「全部あんたのせいよ! あんたが、私の人生を全部ぶち壊した! 私はお嬢様界隈から追い出されて、水野家はあんたのせいで破産寸前、お父さんもお母さんも私を見捨てた。みんな私を見下してる。もう何も残ってない……! 全部、あんたのせいよ!」

甲高い声が、恨みを一語ずつ叩きつけてくる。

だが、瀬尾杏奈の目にあるのは、極まった冷淡さと嫌悪だけだった。まるで目にも入らないとでもいうように、車のドアを開けて立ち去ろうとする。

「待ちな...

ログインして続きを読む