第58章 内通者を捕まえる

瀬尾杏奈はグラスをそのまま、水野心音の頭からぶちまけた。次の瞬間、耳をつんざくような悲鳴が上がる。

ちょうど電話を終えた瀬尾晴海が、外から慌ただしく戻ってきた。

その光景を目にするなり、テーブルの上の紙ナプキンを掴み、ワインで濡れた心音の髪をせっせと拭き始める。

「お母さん……」

水野心音は杏奈を指さして訴えた。さっきまでの大人しさはどこへやら、途端に弱々しい声を作り、涙まで浮かべる。

「私、何か変なこと言った覚えもないのに……お姉ちゃんがいきなり、赤ワインを頭に……」

瀬尾晴海の視線が、杏奈へ向く。

杏奈は心底きょとんとした顔で肩をすくめた。

「それ、誤解だよ。わざとじゃな...

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