第9章 俺の女としての『肩書き』が欲しくて仕方ないんだろ?

スマホを開くと、差出人は陸川純平だった。

「30分後に君の家の下に着く。慌てなくていい。待ってる」

どうしてだろう。瀬尾杏奈の胸に、ふっと複雑な思いが浮かんだ。

古谷晏一と一緒にいた頃、待つ側はいつだって自分だった。

以前、古谷晏一が地方へ出張したときのこと。朝8時に待ち合わせだと決めていたのに、瀬尾杏奈が遅れたのは、たった2分。たったそれだけで、彼は彼女を散々責め立てた。

あの頃の瀬尾杏奈は、恋の中で溺れていた。悪いのは自分だと、全部飲み込んでしまった。

けれど、本当にあなたを大事にする人が――その2分を責めたりするだろうか。

鏡の中の、いつになく華やいだ自分を見つめながら、...

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