第92章 母親が同じで父親が違う弟

瀬尾杏奈は顔を上げた。瞳にはうっすら涙の膜が張り、子猫みたいに彼の胸に身を寄せたまま、やわらかな声で尋ねる。

「……どうしたの?」

陸川純平の喉仏が、ごくりと上下する。身体の奥がざわつくのを自覚しながらも、彼は驚くほど自制していた。杏奈を囲っていた腕を、ゆっくりほどく。

「杏奈……」

陸川純平は彼女の目をまっすぐ見た。冗談の欠片もない声音で言う。

「……後悔してほしくない」

その一言が、瀬尾杏奈の胸の奥に波紋を広げた。

――この人は、私を尊重してくれてる。

男の忍耐と抑え込み。その全部が、彼女には見えていた。

杏奈が唇を開き、何か言いかけた瞬間。

ブーッ、ブーッ。

陸川...

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