第6章

松井紗季の視点

「紗季さん、受付に旦那様だと名乗る男性が……あなたに会わせろって!」アシスタントが真っ青な顔で私のオフィスに飛び込んできた。「警備員では抑えきれません!」

こみ上げてくる怒りに、ペンが宙で止まった。先週の嫌がらせだけでは飽き足らないというの? 哲朗が、この私の会社にまで乗り込んでくるなんて。

「名前は?」

答えはわかっていたけれど、確認したかった。

「星野哲朗です! 奥様だと言い張っていて、受付もどうしていいか……!」

私は深く息を吸い込み、どうにか怒りを抑えようとした。この男は、私がまだ自分の思い通りにできる昔の紗季のままだとでも思っているのだろうか。

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