第7章

星野哲朗視点

午前二時。俺はリビングのソファに座り、ひび割れたスマホを睨みつけていた。粉々になった画面越しでも、あのクソみたいな投稿ははっきりと見えた。

更新ボタンを押すたびに、腹の底を殴られたような衝撃が走る。

紗季の左手。きらめくダイヤモンドの指輪。そして、胸糞が悪くなるような言葉――「新しい始まり。❤️ #婚約しました #幸せな人生」

「ふざけるな!」スマホに向かって叫ぶ。俺の声が、がらんとした部屋の壁に虚しく響いた。

必死にコメント欄をスクロールする。そこに並ぶ祝福の言葉が、肌を粟立たせた。

誰もが彼女の新しい人生を祝っている。

一方、俺はと言えば、この寒い...

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