第9章
あの日、会社から戻って以来、藤崎礼は三日間社長室に閉じこもったきりだった。
ブラインドは固く閉ざされ、スマートフォンの画面には不在着信の山が築かれていたが、彼は一瞥もくれなかった。
電源の断たれた機械のように、力なく椅子に沈み込んでいる。脳裏に焼き付いて離れないのは、あの日、医師が小坂遥を連れ去る際に放った、あの冷え切った言葉だ。
「藤崎社長。我々は五年かけて、彼女が人間らしく生きられるように支えてきました。……さすがはビジネスの天才だ。たったの一週間で、我々の努力を全て水泡に帰した」
そして、警備員に制止されながら叫んだ田島秋乃の声。
「藤崎礼、あんたわかってんの!? 彼...
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