第11章体が欲しい

キリアンは、レナが遠ざかっていく背中を長いあいだ見つめていた。周囲では人波がざわめいていたが、そんな喧噪など意に介さない。

「ねえ、キリアン」

イザベラが笑みを浮かべて近づいてきた。注いだばかりのシャンパンのグラスを手に、声音には戯れめいた甘さが混じっている。

胸元の大きく開いたマーメイドドレスをまとい、キリアンの隣に立つと、ふたりは絵に描いたように釣り合って見えた。

「何を見てるの?」

キリアンは階下から視線を引き戻し、眉がわずかに跳ねたが、表情は変わらない。

「別に」

イザベラは、彫りの深い横顔をじっと観察した。

シャンパンを差し出すとき、指先がわざとらしく彼の手の甲をかす...

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