第5章
退院から三日後、私はキャンパスのカフェで拓也と向かい合って座っていた。頭の中で、二つの小さな声が言い争っているような気分だった。
一方の声が言う。『彼はあなたのために大事な試合を諦めたのよ。これ以上の誠意の証がどこにあるっていうの?』
もう一方の声が反論する。『村上明美、あんたが彼と知り合ってまだ数ヶ月じゃない。本当に心を全部明け渡しちゃうつもり? リスクが高すぎるわ』
しぬ!私の内面の葛藤を察したのか、拓也が優しく尋ねてきた。「どうしたの? 僕と試合を観に行くの、考え直しちゃった?」
「ううん、そういうわけじゃないの......」私は深呼吸した。「あのね......拓也、あ...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章

9. 第9章


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