第25章 修羅場

 綾辻絃葉視点

 黒鳴蓮夜の背後に霧島雲の姿を見つけた瞬間、思わず肩の力が抜けた。

 自分でも不思議だ。どうして彼がいるだけで、こんなに安心してしまうんだろう。

 霧島雲は額にうっすら汗を浮かべている。まるで慌てて駆けつけたみたいで、少し気になった。

「奥さんは、ご存じなんですか?」

 黒鳴蓮夜の身体がびくりと硬直し、私の手首を掴んでいた指がほどける。

 その隙に腕を引き抜くと、視線の先で霧島雲がこちらを見ていた。瞳の奥に、かすかな心配の色。

 ――遠野瑛士が言っていたこと。まさか……。

 そう考えかけて、私は自嘲気味に笑った。あり得ない。私まで都合のいい幻想を見始めるなんて...

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