第26章 家族を愛している

 綾辻真之視点

 個室を出た瞬間、熱を帯びていた頬がすっと冷めていくのが分かった。

 俺はトイレに身を潜め、眉間に皺を寄せたまま考え込む。

 ……おかしい。

 さっきの滝川天裕の目。どう見ても、初対面のそれじゃなかった。まるで俺を知っているみたいに、確かめるように見てきた。

 ママと滝川天裕の会話から察するに、ママは俺たちのことを彼に話していない。だったら、あいつはどうして俺の存在に気づいた?

 考えられるのは一つ――霧島雲だ。

 この前、ママの会社へ薬を届けに行ったときのこと。上田雄大がママをいじめているのを見て、腹が立って、俺は仕返しにあいつの車のタイヤの空気を抜こうとした...

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