第30章 企み

霧島雲視点

 今夜の闇は、妙に冷え冷えとしていた。

 滝川天裕が地下二階へ駆け込んでくるなり、息を弾ませて叫ぶ。

「大変です! チップを盗んだやつ、逃げました!」

 俺は肩の力を抜いたまま、薄く笑う。

「知ってる」

「……知ってる?」

 頷いてやる。

「わざとだ。それに、お前――もう一人“逃げた”のに気づいてないだろ?」

 滝川天裕がはっと目を見開いた。

「誰です? 遠野陽……? あいつが内通者だったってことですか」

「そうだ。だから昨夜、あいつに見張りを任せた。表に出る機会を与えてやったんだ」

 俺は言葉を切り、冷えた息を吐く。

「チップが手元にないなら、こっちの...

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