第32章 交換

橋本高志視点

 俺は呆然と、その二人が俺の車を奪って走り去っていく背中を見送った。

 正直、頭が追いつかない。綾辻真之って、いったい何者なんだ。誘拐されるほどの人間なのか?

 だが、すぐにチップのことが脳裏をよぎる。――あいつらは、チップを探している連中だ。

 つまり、あのチップは相当ヤバい代物ってわけだ。

 視線を滑らせると、少し離れた場所にいた黒服の一団が、もう銃を抜いているのが見えた。悠長にしてる暇はない。

 俺たちに突っ込んできた車――そして、そこから転げるように降りて、ふらふらと遠くへ逃げようとしている女。

 腹を括った。

「……あいつらの車に乗れ。お前が運転しろ。...

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