第34章 誘拐(2)

綾辻真之視点

俺は自分用に携帯を買った。ただ、誰にも知らせていない。

その夜、医者から折り返しの電話が来てから、橋本高志に尾けられているという確信は、いっそう強くなった。

だから橋本高志からママに電話がかかってきた時点で、もう分かっていた。もし翌日、俺があそこへ行けば、あいつはきっと俺を逃がさない。

普通に考えれば、断ることだってできたはずだ。

でも、電話越しに橋本真央の泣き声が聞こえた瞬間、断れば彼女は殴られる――そう思った。

橋本真央が家で両親から虐げられていることは、学校にいた頃から薄々感じていた。

あの日、橋本高志が学校に橋本真央を迎えに来た時のことだ。俺たちはちょうど...

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