第36章 脱出

綾辻真之視点

 もちろん、霧島雲を信じるしかなかったのは、追い詰められていたからだ。

 結局のところ、賭けに過ぎない。あの人がママを――そして、自分という息子を――本当に大事に思っているかどうか。

 同時に、試してもいた。自分とママが、あの人の心にどれだけ居場所を持っているのかを。

 この賭けに負けたとしても、俺は当面どうにかなる。けれどママは、きっと無事じゃ済まない。

 そのときになって警察へ助けを求めることもできる。だが、そんなのは綱渡りだ。安全策とは言えない。

 だから祈るしかない。霧島雲が、ちゃんと賢い人であることを。

 俺に残された手は、もう祈ることだけだった。

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