第58章

綾辻絃葉視点

鈴木慎一郎のオフィスを出た瞬間、胸の奥に溜まっていた息がすうっと抜けた。最初は、職権を盾に私を侮辱してくるんじゃないかと身構えていたのに――拍子抜けするほど、彼は業務指示だけを淡々と告げ、私を追い出すように帰しただけだった。

七階分の清掃と給水の管理。正直、体がいくつあっても足りない。けれど給料相応、と言われたら反論もできない。そもそも私を採用した上田雄大の動機なんて最初から澄んでいなかった――あれは私を辱めるためで、最後には私を犯すつもりだった。

その上田雄大は檻の中。新任の衛生部マネージャーである鈴木慎一郎が、賃金に見合う仕事を割り振るのは筋としては当然だ。なのに、ど...

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