第59章

綾辻絃葉視点

黒鳴蓮夜と別れたあと、職務のついでを装って桐谷誠一にコーヒーを淹れ、彼のオフィスまで運んだ。

ドアを開けて中へ入ると、彼は私を見て目を丸くした。

驚いた顔――それだけで胸が少し浮き立つ。いい印象を残したい。惹きつけたい。そんな下心が、喉の奥で甘く疼いた。

「コーヒー、持ってきました」

桐谷誠一は軽くうなずき、淡々と返す。

「ありがとう」

それだけ。

それでも私は引き下がれず、言葉を重ねた。

「どうして……私の誕生日パーティーに来てくれなかったんですか?」

彼は一拍置いてから答えた。

「家のほうで見合いを入れられて。断れなかったから、会ってきた」

ほっと息...

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