第68章

 綾辻絃葉視点

 また石川成浩の声が聞こえた。

「松本春子ってホント馬鹿な女だよな! あいつのせいで俺もあんなにキレちまった。まあ、大事にならなくてよかったわ」

 それには私も同意しかない。これ以上聞く気にもなれず、自分の個室へ戻ろうとした――そのとき。

 通りすがりに私を見つけた連中が、揃って声を張り上げる。

「姉御、お疲れっす!」

 ……なんだろう。自分がヤクザの親分にでもなったみたいな気分になる。

 私は曖昧に笑って会釈し、その場を足早に離れた。

 仕方ない。そもそも、そこまで親しくない。

 個室に戻ると、松本春子たちはまださっきの話題で盛り上がっていた。

 佐崎山...

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