第12章

「え? 結婚、させたくないの?」

榎本日織は目を瞬かせた。戸惑いがにじみ、驚きは一瞬で胸の奥へ沈む。

――六年も経っていて、子どもまでいるのに……まだ籍を入れてないの?

だが驚いたのも束の間、すぐ別の疑問が湧いた。

葉月はどうして両親の結婚を嫌がるのか。

日織は「子どもにはよくあること」と結論づけるしかなかった。川島羽美が普段から厳しくしすぎて、息が詰まっているのかもしれない――そんなふうに。

自分の失敗した結婚が脳裏をよぎり、日織は腰を落として、なるべく柔らかい声を作った。

「葉月。そういうふうに思っちゃだめだよ」

「羽美さんはあなたのママだし、ふたりはいずれ結婚する。……...

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